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新潟駅高架化に伴う線路切換工事 大プロジェクトが動く

プロフェッショナルが集結

2018年4月13日21:30、新潟駅の工事中高架下に、200名を超える関係者が集合した。いずれも軌道の建設・整備・修繕・点検のプロフェッショナルたちだ。JR東日本・新潟工事区で進行中の整備事業が佳境を迎え、この夜は、間違いなく歴史に残る工事が予定されていた。それは、新潟駅付近連続立体交差事業の核ともいえる線路切換工事。上沼垂と笹口の2か所で、在来線の高架化工事のクライマックスとなる線路切換を実施し、高架駅第一期開業を目指す。
これらの工事は、規模の大きさだけでなく、電車の運行を止めることなく行う点からも難易度が高い。複雑な工程、綿密な計画と施工、さらには利用者と工事関係者双方の安全確保が求められる。この日まで打ち合わせとシミュレーションが入念に繰り返され、様々な部署で準備を重ねてきた。
作業開始は終電後の24時。始発後には列車を運行させながら工事を続行し、完了予定は翌日14日の12時30分。全員で安全を誓う「ご安全に!」の声を合図に、上沼垂と笹口の自身の担当区域へ移動。長い夜が始まった。

写真:社員

新潟駅付近連続立体交差事業とは?

写真:新潟駅付近イメージ 写真:新幹線・在来線の同一乗り換えホームイメージ

対アジアの日本海側拠点として、都市機能の強化が求められる新潟。特に新潟駅付近では、踏切による交通渋滞や鉄道による南北市街地の分断が、大きな課題となっていました。新潟県と新潟市は共同で新潟駅周辺整備事業計画を策定し、2006年、「新潟駅付近連続立体交差事業」をスタートさせました。西跨線橋から万代島ルート線(栗ノ木バイパス)までの2.5㎞で在来線を高架化し、2カ所の踏切の廃止と、南北市街一体化を実現、さらに、新幹線と在来線の同一ホーム乗り換えを可能にし、利便性の向上を図るものです。

※画像は、新潟市のホームページ(新潟駅付近連続立体交差事)掲載画像を引用しています。

高架駅第一期開業に伴う線路切換工事

新潟駅付近の高架化工事は、計画に従い2012年に着手されました。電車を運行しながらの工事となるため、まず仮設線路を敷設し、その仮設線路で電車を運行しながら高架化工事を行うというステップで行われています。13日深夜から15日朝にかけて施工された線路切換工事をもって、越後線の高架化は完了し、信越線・白新線では高架線路2線が完成。2018年4月15日に、高架ホーム2~5番線と、新幹線と在来線の同一ホームの供用が開始され、高架駅第一期開業を迎えました。

施工場所

写真:施工場所

工事概要

工事件名 信越線新潟駅付近高架化東工区軌道(口)工事
施工場所 新潟県新潟市中央区笹口・本馬越・紫竹地内
発注者 東日本旅客鉄道株式会社 上信越工事事務所

工事現場タイムラプス

現場1

線路切換工 切換口(上沼垂)現場レポート

切換工事では、軌きょうの移動や撤去、さらに事前に組み立ててある分岐器の挿入や付帯するレール交換と、とても大掛かりな工事が予定されていた。限られた時間、限られたスペースでいかに作業を行ったのか――ここでは上沼垂の現場をピックアップし、その全貌をレポートする。

作業スタート

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0:30、新潟―上沼垂間の全線閉鎖後、従事者は次々と線路内に入り、担当の作業に着手。車止めを撤去し、軌陸重機、保守用車を該当箇所へ移動させる。

バラストを撤去する

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いよいよ作業の開始だ。あらかじめ袋詰めにしていたバラストを、撤去する分岐器・軌きょうのマクラギの間から運び出す。袋は持ち上げられ、リレーのように手渡され、次々と仮置き箇所へ。

レールを取り外す

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継目のレールボンドを外しながら、並行して山越器をレールを跨ぐように設置。ボルトが外され、マクラギから離されたレールを複数台の山越器のチェーンブロックで吊り上げる。「右側、もう少し上げて」、吊り上げられるレールが水平を保つように、責任者が声をかける。吊り上げたレールは横移動させ、待機している保守用車に積み込む。

マクラギを撤去し運び出す

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レールを支えていた敷設マクラギを軌道工たちが撤去し、その後、オペレーターが操る軌陸重機のグリッパーを使って移動させる。

バラストを掻き均す

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軌陸重機のバケットで、分岐器・軌きょう敷設予定箇所のバラストを大まかにならしていく。バラストの高さは、後工程の軌道整備を考慮し、最終仕上りから100ミリ下がりにする。高さはオートレベルで確認しながら、軌道工が器具を使って細かな調整を行っていく。

新分岐器を移動させる

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いよいよ新分岐器の登場だ。事前に組み立てた新分岐器を運搬台車に載せ、作業員が押して白新上り線の敷設箇所の脇に移動させる。現場に張り詰めた空気が流れ始めた。

横取り装置を仮設する

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新分岐器の敷設箇所に、分岐器を横移動させる横取レールを仮設。より安全に作業を行うため、たとえば12番分岐器においては、規定では4箇所配置の横取レールを5個所設置して余裕を持たせた。慎重に吊上げ器で分岐器を横取レール上へ載せる。

新分岐器を敷設する

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横取レールの上に置いた分岐器を、軌道工たちが掛け声をかけながら横にすべらせていく。動力は人の力だけ。タイミングやスピードを合わせ、ねじれなどが生じないように移動させていく。その後は、吊り上げ器で吊り上げて、計画された位置へ降ろす。繰り返し微妙に角度を調整しながら、レールと接続する。

バラストを散布し、高さを調節

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トラックジャッキを5mごとに設置して、レールを計画のレベルまで上げ、デジタルゲージで水平を調整。マクラギ間に袋詰めされたバラストをあけて、分岐器全体にバラストを散布する。マクラギ下にある約100ミリの空間にはスコップでバラストを詰めて安定させる。

軌道を整備し、道床を形成する

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人力に加え、バラスト突き固め専用のアタッチメント、四頭タイタンパーを軌陸重機に装着してバラストを突き固める。次は、軌道や分岐器を保持する道床を形成する。軌道工と軌陸重機によって道床を形成し、コンパクターが振動により締固めを行って仕上げていく。

軌きょうを敷設する

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ここからは軌きょう設置の段階に入る。流れは分岐器の設置と同じだ。まずは、分岐器と一般の軌道をつなぐ区間に、分岐マクラギを軌道工たちが配列。次に、事前に組み立てた軌きょうを運搬台車で敷設箇所へ運び、分岐器同様に横移動させて、分岐器、レールとつなぐ。その後は、バラストの散布・掻き込みを経て、軌道整備・道床形成を行う。

レールを交換する

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分岐器と軌きょうの敷設に合わせて両者をつなぐ、レールを入換する。新レールの切断位置は、軌道工事管理者と軌道作業責任者が何度も測定して、お互いにダブルチェックして確認して決定する。切断位置が決定したら高速レール切断機の刃を切断位置に合わせて慎重に切断を開始する。

軌陸車の離線

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予定されたすべての工事工程の終了を確認。白み始めた空の下、様々な役割を担った軌陸重機が工事現場を後にして、線路の外に留置する。

社内検査

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ここからは工事の完了を人の目で確認する段階に入る。専用の器具を使って軌道の仕上がりを検測し、当日検査の基準値内であることを確認。

跡確認・建築限界確認

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軌道工事管理者と跡確認者が、工事施工区間を入念に確認。さらに、軌道工事管理者と線路閉鎖責任者によるダブルチェックを行う。最終のチェックが終わったのは、8:00。予定よりも大幅に短縮することができた。すでに信越線と白新線は営業を開始。いつもと変わらない朝が始まっていた。

写真:社員

インフラ構築に関わる誇りを実感

軌道工事では、まず荷重がかかっていない状態で、レールの軌間、高低、通り、水準など多岐に渡る検査項目をミリ単位まで調査して、安全性を確認します。そして、列車を走らせるのですが、実は一度でも列車が通ると劣化が始まります。これは生きている線路の宿命。ですから、工事をして終わりではなく、揺れや落ち込みなどを目視し、安全を確保しています。
現場責任者として、自分が関わる現場では絶対に事故を起こさないことは最大の目標。社内での事故防止の勉強会、月に一度の会議で、危険や注意事項を共有し、自分の現場で徹底しています。現場では協力会社の作業員に働いてもらうので、日頃から互いに信頼関係を築き、安全への意識を高めています。
上沼垂での切換工事の翌日、家族と一緒に列車に乗り、「ここはパパが作ったんだよ」と子どもに自慢しました。社会インフラの整備に貢献している、誇りとやりがいを実感できる瞬間でした。

新潟工事所 佐藤春義
(※所属は取材当時のものです。)

大プロジェクトを成し遂げた達成感

白山駅から上沼垂信号場にかけての連続立体化工事で、これまでにも大きな切換工事は5回ほどありましたが、間違いなく今回の工事規模は最大。この事業に当初から関わってきた代理人は一人だけで、大規模工事の技術の継承においても意義のあるものでした。
今回の工事は、当初、機械で行おうと思っていましたが、故障リスクを考え人力に決定。規模の大きさと限られた時間を勘案すると、線路上を走らせる軌陸車の使用も抑えるべきと考えました。そこで、協力会社の軌道工事のプロたちに技術力を発揮してもらうことにしたのです。
事故やケガがなく遂行できたことが一番です。作業員の他、見学者も多く、200人を超える人の安全を確保できたことに大きな安堵感と達成感を感じています。2年後には、同規模の工事を上沼垂で予定しています。今回得たことを活かし、さらにスムースで安全な工事を行いたいと思っています。

新潟工事所 長谷川滋
(※所属は取材当時のものです。)